先日、矯正治療に関する相談のお電話がありました。
関東にお住まいの成人女性。
「現在、矯正治療を受けているが、体調がどんどん悪くなっているんです。
自分では小臼歯を抜いて治療したことが原因だと思っているのですが。。」
とのご相談でした。
治療の経過をお伺いすると、数年前に矯正治療を受けて、一度は終了したそうです。
しかし、口元の出ている感じがどうしても気になり、その後いくつかの矯正歯科で相談をして、
小臼歯(前から4番目の歯)4本の抜歯を伴う矯正治療を開始しました。
治療開始6ヶ月くらい経過したあたりから、耳鳴りがひどくなり、首肩の凝り、頭痛が徐々に悪化。
うまく噛めなくなり、常に息苦しいと感じるようになったとのこと。
矯正歯科で毎回ワイヤーの調整をして前歯を引っ込める処置をする毎に、自分の体調が悪くなるのが分かるそうです。
非常に悩んでいる様子が伝わってきましたが、
「実際にお口の中を見ていないので、はっきりとしたことは分かりません。
また、小臼歯を抜いたことが直接の原因かどうかは分かりません。」
とまずはお伝えしました。
そのうえで、
「一般論として、矯正治療に限らず、歯列を狭くなるような処置、下顎が後ろ押し込まれるような処置をした場合、息苦しさ、耳鳴り、頭痛、が出る方がいらっしゃいます。」
とお伝えしました。
患者さんは「とりあえず現在の矯正治療を中断します。だけど、抜いてしまった歯の隙間をどのようにするのか悩みます。」
とのことでした。
下顎の位置は非常に繊細で、後ろに下げるような処置はとても危険であることが知られています。
実際に、私が所属していた大学院の研究で、実験的に下顎を後ろに下げると、不快感を感じ、自律神経系にも影響を与える可能性が分かっています。
矯正治療で見た目を改善することが悪いわけではありません。
小臼歯を抜歯することが悪いわけではありません。
しかし、歯並びを改善するはずの矯正治療によって、患者さんの健康が悪化しているとすれば、とても残念なことだと感じました。
矯正治療は患者さんのかみ合わせを大きく変える治療です。
当院では矯正治療を受けるすべての患者さんに、キャディアックス(CADIAX)という器械で、正しい顎の位置を調べたうえで治療を行っています。
見た目だけでなく、きちんと咬めるか、顎の動きは大丈夫か、気道が狭くなっていなか、などを調べたうえで治療を行うことが大切だと改めて感じました。